「見えてきた 県立美術館の戦略」 講演会を開催

2023年1月22日(日)13:30~16:00 上灘コミュニティセンターにて

「リス舎周辺再整備について」 倉吉市総務部企画課 課長 舩木 敏晶氏、課長補佐 藤井 一彦氏

「見えてきた 県立美術館の戦略」倉吉博物館 館長 根鈴 輝雄氏

鳥取県立美術館 周辺の整備計画と美術品収集戦略について聴講

 とっとり県美応援団はこのたび研修の一環として、会員を含む35名が参加した講演会を開催しました。

 まず倉吉市総務部企画課のお二人(メイン講師は藤井氏)より、美術館開館に向け駐車場増設を含む周辺地域の整備計画を伺いました。駐車場不足の課題の解決策の一つとして、美術館予定地に隣接する現在使用されていない旧リス舎を解体しその一帯に駐車場50台分を新たに確保すること、また美術館とパークスクエアを結ぶ屋根付通路の整備、トイレの改修、大御堂廃寺跡ガイダンス施設の整備などを行うことなどをお聞きしました。

倉吉市による取り組みについて語る藤井一彦課長補佐

リス舎・集いの広場周辺再整備の完成イメージ

 次に、倉吉博物館の根鈴輝雄館長より、県立美術館の収集方針に関する戦略を中心にお話をいただきました。特に、県民以外も含め日本で大きな議論を巻き起こし注目されているアンディ・ウォーホールの作品「ブリロの箱」の収集意図と背景という私たちの関心事について、前の週に倉吉市内で行われた県教委美術館整備局の尾崎信一郎美術振興監の講座での内容も触れつつ根鈴館長の持論を力強く展開いただきました。

 京都で開催中の「アンディ・ウォーホール・キョウト」展が若い人たちを中心に大人気であることも紹介され、今回の「ブリロの箱」を約3億円で購入したのは慧眼だったともいわれ、新美術館の建設が全国に知れ渡り宣伝効果が絶大であった(日本海新聞1月21日)と言われ始めていること、また今回、収集方針に関心が高まったことは単なる結果論ではなく、県立美術館のコンセプト「未来を『つくる』美術館」を軸にして新しい収集方針が固まった2018年7月から虎視眈々と、そしてじっくりと練り上げられてきた計画を実行したことによるものであり、関心が高まることも織り込み済みであったと語られました。また尾崎美術振興監の「(ブリロの箱は)いろんな文脈で人を呼び寄せる力を持っている作品であり、県立美術館も今後の展示で(独自の)文脈を示していきたい」との講義コメントも紹介されました。

「ブリロの箱」の物議により「皆が県美の術中にはまっている」と語る根鈴輝雄館長

 「ブリロの箱」を収集する意義は、ウォーホールらにより起こった美術における価値観の世界的変化、これまでの美術にはない発想の誕生という事実を、県内の子供たちが理解することにより、従来の常識にとらわれず柔軟に発送を転換し強くしなやかな思想を身につけるという、美術館の担う美術の教育と普及の役割から見ても重要であること、また今回の「ブリロの箱」の購入について県民が注目することは「皆が既にアートラーニングに足を踏み入れている」とのことで、私たちにもアートの学び心が育まれているのだと気づかされました。

 また、県立美術館と倉吉博物館がそれぞれの役割を担い、協働していく道筋が見えてきたこと、また県美と倉吉の街並みをつなぐ野外の彫刻プロムナードが倉吉市が進めるまちづくりとの連携も図ることができるのではと語られました。

 今回の講演を聴講し、更に開館に向けての様々な取り組みに関わっていくことが楽しみになり、まちづくりへの期待も高まった一日となりました。リス舎周辺再整備については「再整備の全体像がよくわかり楽しみが増えた」「県内の子供達もくるので、そのためのバスの配置、駐車場も含めうまくいきますよう!」など、また県立美術館の戦略については「アンディ・ウォーホールのブリロの箱の価値の大きさを改めて感じることができた」「県美と倉吉博物館の協働について方向性を知ることができた」などの声が参加者からありました。